【執筆のヒントその1】小説(文章)の構成要素を楽曲(歌)と関連づけてみた!

アイキャッチ(小説と歌) 執筆・創作に関するヒント
筆者
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執筆歴20年超の桃花です。

今回は、小説(文章)の構成要素について、楽曲(歌)に関連づけて考えてみました。

とは言いつつ、執筆も歌もいずれも一般人(アマチュア)である私が勝手に考えた私見であって、あくまで一つの考え方に過ぎません。

ですが、こうした発想での説明も珍しいと思いますので、ありきたりの記事に飽きた方にはお楽しみいただけるかと思います。

皆さんのアイディアの引き出しになれば幸いです。

構成・形式

歌では「Aメロ→Bメロ→サビ……」という典型的な曲の運び方があるが、小説にももちろんある。「起承転結」や「序破急」などと言われるものだ。これは下記「強弱」の項目にも関係してくるが、ある場面や展開のまとまりを指すものであり、その変化をつけることで作品を印象深いものにすることが出来る。

かと言って必ずしもその通りにしなければならないかと言えばそういう決まりは無いが、武道で言うところの「型」みたいなもの。それに添ってやれば間違いはないだろう、というものだ。「守破離」してもいいだろうし、全く新たな流派(型)を作ってもいいだろう。

いずれにせよ、作品全体の構成として、どのような流れを描くのか構造的に理解することで、作者も作りやすく、聴衆や読者にもわかりやすい魅力的な作品になる。

〝曲や小説の構成・形式とは、場面ごとのまとまりを指すものである。〟

曲調

曲調を「曲の持つ雰囲気」と捉えると、小説で言うところの「ジャンル」とか「世界観」という言葉が近いように思う。歌では軽快なアップテンポの曲か、落ち着いたバラードか、という大まかなくくりがあるが、小説で言えばSFとかコメディーとか、ほんわか系とかドタバタ系とか、分類方法はいろいろあるが、いずれも種類分けが可能である。

もちろん1つの作品の中でも部分的に笑える部分もしんみりさせる部分もあったりはするが、それは歌も小説も同じだ。全体的に見て、その作品が放つ雰囲気はどういうものか、与えたい印象は何か、ということが「曲調」だと言えよう。

〝曲調とは、その物語全体のもつテイスト、雰囲気のこと。〟

メロディー

曲におけるメロディーとは、「旋律」のことであり、音階(ドレミなど)の連なりによって出来上がる一定の意味を持った内容のもの。曲がどのように流れていくか、その方向を定めるものだ。小説においては、「ストーリー」に置き換えられよう。

ただの文章の羅列だけでは物語にならない。いくつもの文字、語彙、文章の連なりによって、それらが一定の意味やメッセージ性を備えた時、はじめてストーリーが組み上がる。

特定の雰囲気や感情を与えるもの。メロディー無くして歌は存在せず、ストーリー無くして小説は出来上がらない。そういう意味では、曲においても小説においても、欠かすことの出来ない重要な構成要素の一つである。

メロディーが皆の頭から離れない曲、というものがヒット曲となり、題名を聞いて誰もがストーリーを思い出せるのが小説における名作と言える。それを目指すのがいかに難しいことか、曲と小説を比較することでより想像しやすくなるのではないだろうか。

〝メロディーとは、小説におけるストーリーのことである。〟

歌詞

メロディーがストーリーならば、歌詞はなんだろうか? 歌詞は、メロディーに乗せて聞き手に印象や感情を与えていくもの。私は、「表現」になぞらえたい。

物語を描くのに、表現というものを欠かすことは出来ない。小説はただの「説明文」ではないからだ。

登場人物の心情を読者の身にも迫るようにありありと描くことで、読んでいる者は心を揺さぶられる。この「共感」や「感情移入」を促す要素として、歌詞が重要な部分を担っているのは間違いないだろう。ふとした時の気持ちや身近な情景が歌詞に込められていると、まるで自分のことを歌っているような気がして感動するものだ。どれだけ感情に働きかけるかは、歌詞という表現による部分が大きい。

〝歌詞は、言葉を使って心に真っ直ぐ届ける表現・描写。〟

速度(テンポ、リズム)

曲の速度を表すものの中にも、細かく分けるといくつか種類がある。

  • テンポ(ビート):一定の拍を刻むもの(基本的に一曲中では不変)
  • リズム:曲の中でどのように音やアクセントを置いていくか(音符や休符の配置)
  • グルーヴ感:曲における盛り上がりやうねり

※素人が噛み砕いただけの説明なので、鵜呑みにせず詳細は調べてくださいね。

「リズムを制するものは音楽を制する」っていうセリフがあるくらい(出典不詳)リズムは音楽において重要な要素の一つだが、文章や小説においてもそれは同様だ。つまり、リズムやスピード感というのは、小説において非常に重要な要素ということだ。

小説におけるテンポ、リズム(便宜上文章においてはほぼ同じニュアンスで説明していく)はどのように操作するのかと言えば、句読点の付け方、一文の長さ、段落の長さ、あたりで特徴づけるのが主だろう。小手先のテクニックのように思えて、これは実は、その文体の一部、あるいは全体のイメージにも直結するものだ。

これを説明するために、下記の通り引用した。

A)そして現在では煤煙ばいえんで痛めつけられた木の葉や草の葉に生色がなく埃まびれに立ち枯れた大木が殺風景な感じを与えるがこれらの墓が建てられた当時はもっと鬱蒼としていたであろうし今も市内の墓地としてはまずこの辺が一番閑静で見晴らしのよい場所であろう。

『春琴抄』(谷崎潤一郎)

B)お母さまは、何事も無かったように、またひらりと一さじ、スウプをお口に流し込み、すましてお顔を横に向け、お勝手の窓の、満開の山桜に視線を送り、そうしてお顔を横に向けたまま、またひらりと一さじ、スウプを小さなお唇のあいだに滑り込ませた。

『斜陽』(太宰治)

上記を読んで、どのような印象を持ったであろうか? 1文の長さを変えることでも様々に印象を変えられるし、この積み重ねによって出来上がる小説全体のイメージにも影響するものとおわかりいただけるだろうか。

リズムは速度であり、また呼吸でもある。どこで息継ぎするかによって、曲・文章のイメージは異なってくる(休符)は、句読点、大きく捉えれば、どこで改行するかということだ。

スピード感のある文章を書くには、「短く」「進行形で」「時に体言止め」あたりが有名どころ。要は歯切れ良くということだ。

ところで、「行間を読む」という言葉があるが、これを音楽になぞらえて考えるに、見えない十六分音符が感じられるかということではないだろうか。書かない部分を感じさせる。これも音楽と小説とでは酷似している。

グルーヴ感については、たぶんその人の感性と才能由来。これが出来る人は歌手でも作家でも天才だろう。(詳しくないので説明が雑。)

〝リズムを様々に操ることで、作品全体の印象を操作出来る。〟

強弱

これを文章に置き換えるのは比較的わかりやすいと思うが、小説で言えばいわゆるストーリーの盛り上がりに匹敵する。全体の強弱(音楽:AメロBメロサビ、小説:起承転結)だけでなく、場面ごとに強弱を意識すると、よりメリハリがきいて聴衆(読者)を惹き付けるだろう。

何の変化も無い平坦な歌では面白みに欠けるように、いわゆる緩急や濃淡の無い物語では読者を退屈にさせる。落とす部分(静的な部分)と盛り上げる部分(動的な部分)とのコントラストを際立たせることで、より聞き手読み手を惹き付けるのは、音楽も小説も変わらないだろう。

〝歌の強弱は、小説の起伏に相当する。〟

テクニック(歌唱・演奏)

小説においては、いわゆる技法のこと。比喩、倒置法、体言止め、など。義務教育で習うものばかりだ。知識・テクニック的な部分は努力・練習でなんとか出来る部分であり、上達・改善を見込みやすい項目である。

しかし、いくらシャクリ(ある音を出すのに少し下から音程をずり上げるようにして音を当てること)が出来るからと言って常にシャクっていたら聞き手には気持ち悪く聞こえるように、頻出させ過ぎるとウザくなるので、さじ加減は重要だと思う。

〝曲でも小説でも、テクニックを適度にちりばめることがうまく聴かせる(読ませる)コツ。〟

音色、音程

綺麗な音色、というと、皆さんはどのようなものを想像するだろう? 好きな歌手の声でも、落ち着く楽器の音でもいいので思い浮かべてみて欲しい。聞いていて心地よい音色というのは、歌手の目指したい声の一つに違いない。同様に小説においても、読んでいて心地よい文章というものが存在する。

どのように滑らかに次の音に繋いでいくかは、文章における自然な言葉同士の繋がりに相当するし、いかに跳ねた音階で聞いてる人に特定の印象(元気な印象や驚きなど)を与えるかは、読者を引き込む予想だに出来ない展開や勢いある文章に相当する。

基本中の基本ではあるが、音楽における「音色」「音程」は、執筆における「語彙力」や「文章力」に相当している。

〝音色はどんな語彙を選択するか。音程は、言葉と言葉をどのように繋いでいくか。〟

声質(演奏のクセ)

勢いあるパワフルな歌声とか、ハスキーでやわらかい歌声とか、低くて落ち着いた歌声とか、ツヤのある魅力的な歌声とか、歌手でも様々な声質の人がいるけれど、これも文章にリンクするものと思っている。各作家の持つ個性、いわゆる「文体」というものだ。

どの作家でも、その作家らしい文章というものを書く。口調というか、○○節(「○○」には作家の名前が入る)というか。一文読んだだけでも、「ああこの文章は○○っぽい」と、その印象を強烈に感じるようなもの。

もちろんモノマネ芸人ばりにいろんなテイストの文章を書く器用な人もいらっしゃると思うけど、「この文章はこの人にしか書けない」という声質を持っている作家にはコアなファンがつく。どんな人でも書き続けていればその人らしい文体(口調)に落ち着いてゆく(開拓してゆく)とは思うが、それをウリに出来るまで昇華するにはなかなか時間のかかるものだろう。(元々〝声がいい〟人もいるだろうが。)

個性や好みが関係してくるものは磨いていくのが難しい部分ではあるが、これも重要な要素に他ならないと思う。

〝声質とは、作家の持つ独自の文体、個性を感じさせる口調のことである。〟

まとめ

いかがだっただろうか。まとめると、次の通りとなる。

楽曲(歌・演奏)文章(小説)
構成・形式Aメロ・Bメロ・サビなど起承転結・序破急
雰囲気・世界観ジャンル・曲調ジャンル・系統
構成(音)メロディーストーリー
構成(文字)歌詞表現・描写
速度テンポ・リズム・句読点・文や段落の長短
強弱声量の大小・クレッシェンド デクレッシェンド物語の起伏
テクニックエッジ・ウィスパー・シャクリなど比喩・倒置法・体言止めなど
響き・滑らかさ音色・音程語彙・言葉同士の繋がり
個性声質・演奏のクセ文体・節回し
【構成要素】小説(文章)と楽曲(歌)との関連性

上記の関連性を考えながら執筆すれば、あなたの小説からも美しいメロディーが聞こえてくるかもしれない!!

筆者
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これからも、一見知識の習得には繋がらないようなナゾ発想の情報もアップしていきたいと思います(オイ)ので、くだらない読み物が好きな方は遊びに来て下さると嬉しいです。

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