執筆歴20年超の桃花です。
今回は、小説の書き方に関する方法の一つとして、「プロット」をご紹介します。
私見を交えたコラムの位置づけなので、読み物の一つとして気軽に読んでいただければ幸いです。
まえがき
小説の書き方に正解というものは無いと思っているが、いわゆるセオリーのようなものはあるようだ。すなわち、いかに効率良く、最短ルートで、爆発的にヒットする小説を書けるようになるのか、といったメソッドのようなものである。
小説の書き方系指南書によく出てくる概念の一つに、「プロット」というものがある。たぶん野球で言うところの素振りと同じくらい基本的な概念だ。
私は独学(?)で書いてしばらく経ってから指南書でこの考え方を知ったクチなので、恐らく勉強家の作家志望の人よか全くわかっていない。
という訳でわかりやすい解説などではなく、私見に近い読み物に成り果てる気概は満々なので、もはやコラムとしてお読みいただくことを推奨する。あと、偉そうに語れる資格は一切無いので、すべて鵜呑みにせずに正規の本などでちゃんと調べてね。
では、執筆のブレイクタイムに一杯のコラムをどうぞ。
「プロット」とは? メリット・デメリット
「プロット」とは
「プロット」とは、物語のおおまかな流れを最初から最後までザックリと説明したようなもの。小説などの本文を書き始める前に道筋・構想を立てるために作成する。
「プロット」の例
川に洗濯をしにいったおばあさんが、流れてきた桃を拾う。家に持ち帰り割ってみると、中から赤ん坊が出てくる。赤ん坊は「桃太郞」と名付けられ大事に育てられる。立派な若者に成長した桃太郞は、鬼ヶ島に鬼を退治にするために旅に出る。途中、犬、猿、キジを家来にする。鬼ヶ島で鬼を退治する。宝物を手に入れ、家に帰って幸せに暮らす。
※量は決められていないが、通常の小説程度の長さであれば、もっと細かい設定まで織り込むものと思われる。
「プロット」と「あらすじ」との違い
「あらすじ」と似ているかもしれないが、「プロット」は、作者がストーリーを書くための骨格とする部分なので、ストーリーがどう進むのかを最初から最後まで機械的・網羅的に記したもの。設計図に近い。オチとかネタバレとかも全部含む。
※とは言え決まりは無いので、しっかり細かく書く人と、かなりアバウトに書く人とやり方は様々。
一方「あらすじ」は、未読の読者も含めて他者にその話がどんな話なのかを簡潔に説明するために使うことが多いので、ネタバレを伏せて面白そうな部分をかいつまむような表現でもOK(全体的な流れの説明は行う)。魅力が伝わるように書くことが多い気がする。
「プロット」を書くメリットとデメリット
- 実際本文を書く際、迷子にならない(どのように書いていけばいいかわかりやすい)。
- 設定の矛盾や全体的なストーリーの組み立て方などが、実際に本文を書く前に判断・修正しやすい。
- 実際本文を書く際、話の流れに無駄な場面や描写を書く可能性が減り、時間短縮になる。
- 書き上げた時、「こんなハズじゃなかった」といった大人的後悔に陥りにくくなり、イメージしてた作品を仕上げられる。
- こじんまりとした話(スケールが小さい話)になる可能性が高まる。
- 途中で良いアイディアが浮かんだとしても、採用しづらい。設定の変更が難しい。
- 説明調・予定調和の作品になりやすく、インパクトのある尖った作品になりにくくなる。
多くの指南書には、「すぐに書き出してはならない。まずプロットを立てるべし」とある。すなわち最初にあらあらのストーリーの流れを決めておいて、そこをなぞるように文章を書いてゆくのだ、ということ。初心者さんは勢いで書き始めても、途中で空中分解して(=書けなくなって)終わるよ、と言っているのだ。
メリットの中で、①②④あたりがプロットを書く主な目的だと思うが、③の効能は非常に大きい。これは単なる効率化というよりも、「まず作品を仕上げることで自信がつく」「量産することで執筆力がぐんと上がる」ということが、結果的に執筆稼業においてとてつもないプラスに働くからだ。
デメリットの中で、③あたりはプロット&文章力がしっかりしていればそんな事も無いのでさほど恐れることは無いのだが、強敵は②あたりかな。上級者は①も結構恐れると思う。
「プロット派」と「非プロット派」
「プロット派」と「非プロット派」の2種類の書き方
上記でも説明したが、プロットとは物語の「設計図」である。
漫画家さんが本紙を描き始める前にザッと描く「ネーム」とかいうアレが小説で言うところのプロットだ。単発のイラストで言えば、「ラフ」とか「あたり」とか呼ばれるザッとした目印のような下絵のことだ。
家を作る人も、漫画を描く人も、何の目印もなくいきなり作り出すことはないだろう。プロットはそういうものだ。
だが、ごく一部、下絵無しに描き始めちゃう絵師さんとかもいる訳で。小説でもプロット無しにいきなり書き始めちゃう人がいる。それが「非プロット派」だ。
私は長らく自分で気ままに書いていたタチなので、非プロット派(プロット書けない人)である。
プロットなんて知らなかったしさ(無知万歳)、書きたいように書いてただけだしさ(趣味謳歌)、プロット書こうとする前に本文が出てきちゃうしさ(欲望不制御)、まぁプロットとかいう枠組み作ろうとすると手が止まってしまう訳。
一切参考にはならないと思うけど、話の流れ上一応説明すると、私の執筆スタイル(非プロット)は、
- 書きたい文章や場面が順序ランダムで湧いてくる。→書き取る。
- ①がある程度溜まってきたら、物語が進んでいくように並び替える。
- 間を矛盾のないように埋める。
っていう〝絵画方式〟!
絵もさ、(いろんな描き方はあると思うが一例として、)おおまかな部分を描いていって、だんだん細かい部分を肉付けしたり、着色の時も色重ねていったりして徐々に深めていくじゃん。そういうイメージで小説を書いてる。(世界一わかりにくい授業開講中)
まぁでもこれ、よほどでなければ素人の書き方だし、言ってる私は正真正銘の素人だから、オススメはしない。
「非プロット派」から見る「プロット派」への意見
でもさ、ふと思った。プロット派、本番書き始める前にストーリー全部の流れを考えられちゃうって、ある意味天才じゃないか? 書き始める前に登場人物の性格とか話の起伏とか、全部頭の中だけで考えちゃう、ってことでしょ? うわー、私、書いてみないとそういうの考えられないよ。それ考えるだけで5年はかかるよ。ってか考えてる暇あったら本文書きたいよっ。
やっぱ私は走りながら景色を拾っていくタイプだし、登場人物と一緒に過ごしていくことで彼らの性格や思考を知っていくタイプだなー。「このセリフ!」みたいなひらめいた時、それ使えないって悲しいじゃん。天啓さようならーだよ。「削除文」データばっかり溜まってくよ。
オススメはどちら?
しかし、偏屈な芸術家みたいなこと嘯いておきながら思う。
絶対プロット書ける人の方がはえーわ。(実利)
そしてぐんぐん上達して、「量が質を凌駕する」だわ。(圧勝)
長いこと書いてる割にはヒヨコにもなれない理由が判明した。プロットの存在に早く気づけるってすごく大事。
自分一人で荒野を開拓していく時代は終わったんだ、お偉い書物の仰ってること聞いてれば間違いないヨ。人生はあっという間なんだヨ。まだ書き方定まって無い人は「プロット型」習得すべし。
私はもう自分の書き方というものが定まっちゃってるから仕方ないんだけど、しっかりプロット書ける人は安定的にすくすく上達するだろな、と思う。もちろんそれだけで小説が飛ぶように売れる、というのとイコールにはならないが。
とか言いながらも、プロット派でいくか非プロット派で行くかは結局好き好きかなあとも思う。
結論どっちで書こうが、完成品の善し悪しがすべてと思うし。プロット立ててようが立ててなかろうが、完成品の出来には関係ないし。家建てるなら絶対的に設計図はいるだろうけど、絵空事の建築物組み立てていく文筆家は必須条件じゃないだろうから。空中楼閣設計いらず、だよ。
……ってこんなこと言うと、サブカルチャー系のスクールだったら黒板が飛んでくるのは分かってるよ、落ち着け?(自分がな。)
プロでも後者(=非プロット派)って結構いそうな気がするし。やっぱプロになる程の人は非凡だからね。みんながやってることすっ飛ばせたり、誰もやらない方法を突き抜けてやれちゃう人なのよ。
村上春樹先生だって、執筆するときPCの画面で、くっきり既定のページが終わったらたとえ語彙の途中でもそこでその日は機械的に執筆終了する、ってテレビで見た気がする。スタジオ騒然! みたいな感じで放送されてたけど、あえて途中でストップすることで、次回画面を開いた時、すぐにスイッチ入って、ストーリーの続きを思い出せるんじゃないのかな、予想だけど。そういう自分だけの執筆ゾーンに入れるルールや儀式を持ってるのもいいよね。うん、自分のやり方が定まってればよろし。
とは言え、「プロットすっ飛ばしてやれちゃう方が天才みたいでカッコいいや!」って安易な理由で非プロット方式採用しないでね。たぶんよほどの天才でも、プロット派の100倍とか量書いてそこに到達してると思うから。プロット派から始めて非プロットでも書けるようになった人だっているだろうし。手間に思えるかもしれないけど、事前にプロット書いとくと、結果的には相当な時短が見込まれる。大人しくプロット書けるようになるべきだよ(白目)。
あとがき
という訳で、今回も相変わらず私の脳内ダダ漏らしの適当な授業だったなぁ。
でも、答えはコレさ! っていう広く普及している解説記事じゃなくて、読んでくれた方がいろいろ考えを巡らせてもらえるようなコラムの位置づけで書いてるので。反論でも疑惑でも、何か思うところがあれば読者の方ご自身で調べて、いろいろ模索して欲しいと思う。
何より執筆を楽しんでいこうねー!
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